はじめに
みなさん、こんにちは、こんばんは。しもやんです。
今現在、我々が暮らしている社会は、高層ビル、橋梁、ダムなど様々なところにコンクリートが使われています。一概にコンクリートといっても、全く同じ性能のコンクリートはこの世に存在しません。
コンクリートは求められる品質に対し、製造から施工まで非常にシビアな品質管理を行う必要があります。
その品質管理を担うスペシャリストがコンクリート主任技士です。
今回は、コンクリート主任技士を目指す方々の一助となればと思い、私の合格体験談も含め、勉強方法をまとめました。
お目通しのほど、よろしくお願いいたします。
・コンクリート主任技士受験の概要
・独学で合格するための勉強法
・おすすめの参考書と問題集
・2ヶ月で合格した私の体験談
コンクリート主任技士とは
国土交通省:土木工 事共通仕様書等において「コンクリートの製造,施工,試験,検査及び管理などの技術的業務を実施す る能力のある技術者」と規定されているほか,土木学会「コンクリート標準示方書」,日本建築学会「建 築工事標準仕様書 JASS 5 鉄筋コンクリート工事」において,「コンクリート構造物の施工に関して十分 な知識および経験を有する専門技術者」と位置づけられております。
コンクリート主任技士は、生コンクリート工場やコンクリート二次製品工場、建設現場など様々な場所で品質管理の役割を担っています。
コンクリート主任技士試験概要
まず、コンクリート主任技士の勉強を始める前に、試験の概要をしっかりと把握しましょう。どんな資格でも勉強を始める前にはその試験の出題範囲や合格基準、どのような形式で出題されるかなどしっかりと把握することが大切です。
試験概要
2020年の試験概要
試験時間:3時間(午後開始)
試験内容:4択25題、記述1題(1000文字)
受験者数:2612人
合格者数:358人
合格率:13.7%
例年の試験内容は4択が30問もしくは27問、記述は600文字〜800文字2題出題されていました。また、試験時間は3時間30分でした。
2020年度は試験時間3時間に対して、4択が25題、1000文字記述が1題でした。実際に受験した際の感覚として、時間的に苦しい試験では無いと感じます。目安として、1.5時間で4択を解き切って、残りの1.5時間で記述に対応する流れでいくといいと思います。
試験会場は全国の主要都市で開催されます。試験開始時間は午後でしたので、開催地から離れている方でも、自宅を当日の朝に出発しても間に合う時間です。場合によっては前泊も検討されてはいかがでしょうか。
合格率ですが、例年13%前後で推移しています。受験する方々のほとんどが「コンクリート技士」を合格する力量を持っているはずです。それを勘案すると13%前後という合格率は非常に低いと思います。このことから、具体的な合格点が定まっておらず、相対評価ではないかと推察してます。
受験資格
上表に受験資格を示します。保有資格によって、受験に必要な経験年数が異なってきます。何も資格を有していない方は、受験をするまでに7年の時間が必要です。コンクリート技術に関する科目を大学等で受講されたかたは4年以上の時間が必要です。
A1〜A7の資格を保有している該当する方は、受験に必要な経験年数が定められていません。
合格基準
明確な合格基準は発表されていません。しかし、例年の合格者の得点率から4択は7割以上が必要だと思われます。私の場合、4択は7割を超えた程度でした。例年の合格率の推移から、相対評価と思われ、上位13%以上の得点が必要だと思います。
記述については、多少の運もあると思います。しかし、誰が読んでも合格と判断できる論文を記述すれば、確実に合格できるはずです。
2ヶ月で合格するための勉強方法
ここからは、具体的に私が合格した勉強方法をみなさまに伝えていきます。
準備物、参考書
オススメの参考書や勉強に役立つアイテムを紹介します。
問題集:コンクリート主任技士試験問題と解説(最新版と5年前のもの)技報堂出版
参考書:コンクリート技術の要点 最新版 日本コンクリート工学会
ルーズリーフ:Campasドット入り B5 B羅6mm KOKUYO
PC:エクセルとワード
お気に入りの筆記用具
問題集
まず、問題集から。
問題集は技報堂出版の「コンクリート主任技士試験問題と解説」がオススメです。この問題集は、過去5年分全問題の過去問が分野別に1問1ページずつ問題と解説がまとめられています。そして、過去6年前から10年前の全過去問と回答(解説なし)も後半にまとめられています。
また、記述問題に対しても1997年からの問題と解答例、回答のポイントがまとめらています。まさしく、合格するための1冊です。
しかし、合格するためには過去10年分の過去問を完全に自分の物にする必要があると感じました。そのため、5年前のこの問題集をヤフオクやメルカリなどで手に入れることをお勧めします。5年前の問題集には、その時の過去5年分全問題の回答解説が詳細に載っています。また、その時の過去6年前から10年前の全過去問と回答(解説なし)も纏められています。
すなわち、最新版と5年前の問題集を手に入れることにより、10年分の詳細な回答解説と11年前〜15年前の問題と回答と、歴代記述の解答例と回答ポイントを入手することになります。
コンクリート主任技士の出題範囲は非常に広いため、これだけの準備は必要だと感じます。
参考書
参考書としてお勧めするのが、コンクリート工学会から出版されている「コンクリート技術の要点」です。この本は、コンクリート材料、配合から維持管理まで浅く広く、図や表も数多く纏めらています。特に、図や表はそのまま試験問題にも使われており、問題集を解いていてわからないところは、この本で調べること繰り返していくうちに、合格する力が付いていると思います。
この本の注意点です。最新版を購入ください。古い書籍ですと、規格が変わっている場合に対応できなくなります。
以下のリンクから購入できます。ここでも手に入らない場合は、大型書店やヤフオク、メルカリなどを調べてみて下さい。
ちなみに、8800円です。
ルーズリーフ
記述試験があるので、筆記の練習を行う必要があります。そんな時におすすめなのが「Campasドット入り B5 B羅6mm KOKUYO」です。
このルーズリーフはドットが入っています。1ドット1文字として方眼紙に見立てて、筆記の練習を行うのに最適です。
PC
コンクリート主任技士に合格する為には、膨大な量の知識を覚える必要があります。また、記述試験対策についても、何度もトライアル&エラーを繰り返し論文を完成させていく必要があります。
時間がない中で合格をするためには、効率的に勉強を行う必要があります。
そんな時の最強アイテムがエクセルとワードが使えるPCです。
4択問題や参考書の重要キーワードをエクセルのフィルター機能を使ってまとめます。
記述練習では、ワードで文字数を把握しながら文章を書いて試行錯誤を繰り返しながら完成に近づけます。
筆記用具
試験に備え、常に同じ筆記用具を使い体になじませましょう。特に記述試験は手書きで1000文字も書かなければならないため、慣れた筆記用具を使うことにより、安定した文字が書けると思います。
4択試験内容
ここでは、4択問題の重要ポイントと具体的な勉強方法を紹介します。
4択の出題ポイント(参考:コンクリート主任技士試験問題と解説)
①コンクリート用材料
②コンクリートの性質
③コンクリートの耐久性
④配合設計
⑤製造・品質管理・検査
⑥施工
⑦コンクリート製品
⑧コンクリート構造の設計
コンクリート主任技士の4択問題は大きく分けると8つのポイントに分かれています(参考:コンクリート主任技士試験問題と解説)。非常に幅広い分野の深い部分まで問われています。
以下に、私が考えるそれぞれの分野の注意点を示していきます。
①コンクリート用材料
・セメントクリンカーの組成化合物とその特性
・表面水率の測定方法
・混和材・剤の特徴
・普通ポルトランドセメントの水和過程
・水と骨材(JIS A 5308)
・鋼材
まず、セメントクリンカーの組成化合物とその特性ですが、これは例年確実に出題されます。絶対に頭に入れておく必要があります。具体的にはC3S,C2S,C3A,C4AFの4成分の、水和速度、強度、水和熱、収縮、化学抵抗性の優劣関係の把握です。また、低熱セメントであったらどの成分が多いかなどの成分分布も把握する必要があります。私は、1日1回、上述の問題集に掲載されていた一覧表をルーズリーフに書き写すことを1ヶ月ほど行いました。
表面水率の測定方法については、チャップマンフラスコを使用した場合の砂の表面水率の算出がほとんどです。ただし、様々なパターンの出題がされているので過去問演習を繰り返してください。また、注意点として2018年に粗骨材の表面水率の問題が出題されています。この点も事前にカバーしておくべきです。普段の業務ではPCのプログラム等を使って表面水率を算出している方がほとんどだと思います。改めてこの部分の理解を深めて下さい。
混和材・剤の特徴については、フライアッシュ 、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、各種減水剤の特徴と利用方法が出題されます。
セメントの水和過程については、2017年の問題2番をしっかりと頭に入れておけば応用が利きます。
水、骨材、鋼材については各種JIS規格から出題されます。問題演習を繰り返すことにより知識として定着させましょう。
②コンクリートの性質
・ビンガム流体
・クリープ
ビンガム流体については、2019年の問題9番が参考になります。私はここを理解するのに非常に苦戦しました。以下の動画で理解が深まりました。
クリープは2019年の問題11番がオススメです。弾性歪み、クリープ歪み、無載荷歪み、クリープ係数の関係性を把握しましょう。
③コンクリートの耐久性
・アルカリシリカ反応
・塩害
・中性化
・凍害
・化学的侵食
コンクリートの耐久性は上記それぞれが起こる環境条件、見た目の変化、対策(使用材料との関連)について把握しておきましょう。例年必ず出題されています。化学的侵食は主に下水道劣化と硫酸塩の関連について問われていました。
④配合設計
・表面水率の補正方法
・計量間違い時の数値
・単位粗骨材絶対容積
配合設計の出題は、「表面水〇〇%時の現場配合はどうなるか」というパターンがほとんどです。日々コンクリートを取り扱っている方々であれば、他の問題と比べると簡単に感じる問いだと思います。ただ、本番では関数電卓は使えないのでしっかりと演習を積むことが必須でしょう。
⑤製造・品質管理・検査
・JIS A 5308全般(以下の項目)
・スランプフロー、スランプ、強度区分
・空気量
・強度判定基準
・材料計量誤差
・製造、運搬
・水(回収水、スラッジ固形分率など)
・骨材(アルカリシリカ反応対策や再生骨材)
・トラックアジテータのドラム内に付着したモルタル使用方法
この分野のほとんどの問題は「JIS A 5308 レディミクストコンクリート」を理解しているかどうかにかかっています。JISの内容は前述の「コンクリート技術の要点」に纏められています。または、jiscのHPでも閲覧が可能です。ピンポイントで規格値を問われることもあるため、問題演習+JISの内容確認を繰り返し行うことが必要です。知識の定着方法として、出てきた数字を1日1回ずつルーズリーフに書き写すことをオススメします。
⑥施工
・ポンプの選定、圧送負荷
・打ち込み、打ち継ぎ
・表面仕上げ、養生
・鉄筋の継ぎ手、溶接方法
・かぶり
・暑中、寒中コンクリート
・温度ひび割れ
・スランプの調整方法
・水中コンクリート
・プレストレストコンクリート
施工に関する出題は非常に幅広く問われます。問われることは基本的な内容で、日常の業務の中で気をつけていることがほとんどだと思います。ただし、細かく聞かれる点として、鉄筋の溶接方法や継ぎ手があります。重ね継ぎ手の長さの規定、ガス圧接継ぎ手の鉄筋径の規定などです。
⑦コンクリート製品
・二次製品の種類、製造方法
・二次製品の養生方法
二次製品に対して馴染みある方は楽な分野。プレテンションとポストテンションの違い、オートクレーブ養生の違い、製品ごとの配合(特にW/C)の違いなどを調べておきましょう。
⑧コンクリート構造の設計
・片持ち梁や単純梁の曲げモーメントのかかり方
・せん断耐力の増減
・構造物のひび割れ(外的要因)
この分野も問われることは基本的な事項です。また、例年過去問と同様の問題と同様の問題が出題されています。
4択対策
4択対策の具体的な勉強方法を記述していきます。
4択対策のポイント
①ひたすら過去問を解く
②わからなかったことや気づきをエクセルにまとめる
ひたすら過去問を解く
まず、前述の通り、過去問を15年分手に入れて下さい。そしてそれをひたすらやるだけです。
「問題を1題といたらすぐに解説を読む」をひたすら繰り返して下さい。勉強を始めたばかりのころは、ほとんどの問題は解けないはずです。そのため、全部解いてから解説を読むことは非常に効率がわるいです。1問ずつ確実に解けるようにしましょう。
過去問を解くときのやり方として、「過去に解いた時に間違えたかどうかの記録をつける」と自分の努力が目視確認できてやる気向上に繋がるのでオススメです。下に示すように私のやり方は問題を解いて、間違えたら「/」、正解したら「・」を付けるようにしています。この場合は、1、2回目は間違えて、3回目以降は正解しています。合計6回同じ問題を解いています。
②わからなかったことや気づきをエクセルにまとめる
問題をといたら、次にわからなかったことや気づきをエクセルにまとめましょう。具体的には以下の通りで、左側にキーワード、右側に詳細を記述します。フィルター機能を使うことにより利便性を向上させ、自分だけのオリジナル参考書が完成していきます。
私は大体600キーワードぐらい作成しました。同じキーワードが重複することもありますが、右側に記述する内容は全て異なっています。選択肢の中で正しいことが記述されている場合はそれを丸写しするのも効果的だと思っています。
記述試験内容と対策
記述問題の出題ポイント
①コンクリート技術に関する業務(立場、業務内容、改善等)
②環境負荷低減
③構造物の耐久性の向上
④生産性の向上
⑤自然災害
⑥少子高齢化
⑦IT
過去の記述問題を大きくわけると、おおよそ上記の7点に分類されます。特に①については、例年記述2題のうち、1題目が該当していました。②〜⑥については、自分の業務に絡めて論じる必要があるパターンと、コンクリート業界(建設)全般について問われるパターンとに分かれます。
以下、私の実践した記述の勉強方法です。
①それぞれのパターンについて、問題集の解答例を参考にPCを使い論文を完成させる。
②ルーズリーフに完成した論文をひたすら書き写す。その際、1行25文字を意識する。
③自分の手書きの論文を音読。
これらを繰り返していくうちに、次第に読みやすい論文に仕上がっていくと思います。特に音読は絶対に行って下さい。スラスラ読める=読みやすく分かりやすい文章です。また、出来上がった論文は日を空けてから再度確認すると思わぬミスに気がつくことがあります。
論文を作り上げる際に具体的な数字を入れると説得力が上がります。以下の項目は事前に押さえておきましょう。
・セメント1t製造する際のCO2排出量
・建設業の人口推移
・建設投資額の推移
・近年の風水害、地震災害の被害
・混和材の生産量(高炉スラグ、フライアッシュ 、シリカフューム)
合格体験談
私が合格したときの体験談です。参考になればと思います。
2ヶ月前
11月末が試験でしたので、本格的な勉強は10月頭から始めました。9月のうちに過去問集を手に入れて勉強を開始できる体制は整えていました。
10月のうちは4択をメインに行い、記述は11月からとざっくりと計画を立てました。
とりあえず、過去問集1冊(過去問5年分)を頭から解いてみました。この時はエクセルにまとめる作業は行わず、全体把握と思い1週間で1周終わらせました。案の定、ほとんど解けません。問題集には「/」マークばかりついていました。
1周目で問題全体の概要をつかんだので、2周目は丁寧に解いていきます。1問1問ポイントをエクセルにまとめていきます。2冊目の問題集も丁寧に1周取り組みました。ここで2週間ほど使いました。
ここからはひたすら問題を繰り返し、繰り返し解いていきます。1年分を1時間で終わらせるペースです。
勉強時間は平日2時間、休日5時間ほどでした。
1ヶ月前
11月からは記述問題に取り組み始めました。ワードを使って問題集に掲載してある解答例を自分の業務に当てはめながらカスタマイズしていきます。平日1時間は4択、1時間は記述というペースです。1週間で大体の解答例が完成しました。
2週目は出来上がった解答例をルーズリーフにひたすら書き写し、音読を行いました。実際に手書きや音読を行うと用意した論文の間違いなどに気がつき、微修正を何度も繰り返しました。記述に飽きたら4択問題を行います。
3〜4週目は今まで解いてきた4択で特に「/」が多い問題に絞って再度知識の定着をはかりました。記述については書き写しのみです。
試験本番
試験会場は近所でしたので、当日の朝は時間に余裕を持つことができました。私のルーティンとして、試験開始30分前はエナジードリンクを飲んで脳を活性化させます。
問題を開いてざっくりと目を通すと、4択の問題数が例年より少なく、記述問題は1題のみになっていて且つ文字数が1000文字に増えていたことに焦りを感じました。
焦りを感じた反面、実際に解き始めると次第に集中力が増してきました。4択を解き終わった時点で1時間ほどしか経過しておらず、余裕を持って記述に望むことができました。
記述問題の文字数は増えていましたが、今まで用意した論文をカスタマイズする形で対応できたと思います。
記述が終わって大体残り45分です。その間、何度も4択問題の見直しや記述の誤字脱字確認を行うことができました。
合格発表
合格発表当日、スマホで合格発表のサイトをみると自分の番号がありました。非常に達成感がありました。やはり自分の番号があるのは、どんな資格でも嬉しいものです。
さいごに
今回は、コンクリート主任技士合格の実体験を踏まえ、勉強方法等をまとめました。この記事がこれから受験を控えている方々の一助になればと思います。皆で業界全体を盛り上げていければと思っています。
最後になりますが、応援してくれた方々やコロナの影響下に試験を開催してくれた方々へ感謝申し上げます。皆様のおかげで合格することができました。今後ともよろしくお願いいたします。
(2020年受験時の記事です。最新情報とは異なる場合がございます。)